「環境と社会」研究委員会(RC24)
国際社会学会「環境と社会」研究委員会(RC24)と環境社会学の国際化の課題
活気あふれるRC24
2006年7月に南アフリカのダーバンで開催された第16回国際社会学会の大会において、53ある研究委員会(RC)の中で、最も活況を呈した部会の1つが、「環境と社会(環境社会学)」(RC24)であった。145の報告は、6日間で最大18回のセッションをフルに用いても、1回に7報告程度にもなり、会場は100人前後の参加者の熱気で満ちていた。日本からも10人近い参加者があった。ここではRC24と日本の環境社会学の経緯を振り返りながら、われわれの国際化の課題を考えてみたい。
RC24も日本の環境社会学会も、1992年に発足した比較的新しい組織である。おりしも環境問題のグローバル化のために、当初から国際的な研究交流へのニーズは大きかったといえる。日本の環境社会学会も、93年に独自に「アジア社会と環境問題」をテーマにした国際会議を開催し、日本からの「公害輸出」問題等を討議した。98年のモントリオール大会では、当方の初代会長、故・飯島伸子と当時のRC24会長、R. Dunlapらとの、本格的な研究交流が開始された。RC24の理事としても、発足当初から、日本からも満田久義、長谷川公一、寺田が選出されている。
発信型の環境社会学
環境社会学の国際化の特質は、日本においても公害研究等独自の研究蓄積があったので、欧米の理論等を吸収する受信型であるよりも、むしろ関係形成型ないし発信型であった。筆者の経験からも、むろん、構築主義的環境社会学、エコ近代化のような新しい視点を学べたことも有益であったが、それにも増して、通常ほとんど情報が入らない東欧、中南米、アフリカなどの報告者から、有機農業、廃棄物、地域おこしなど、日本と同様の諸問題のついての報告に多くを学んだ。
アジア的問題状況の重要性
出てみればその有益さはわかるのだが、やはり言葉の問題もあってか、日本から(あるいは途上国、非英語圏、アジアも含めて)の出席者は圧倒的に少ない。一方、国境を越えたアカデミック・コミュニティとしてのRC24の機能は着実に大きくなりつつある。4年ないし2年ごとに顔を合わすメンバーの間には次第に一定の学問的共通理解や信頼感が醸成され、懇親会では共同研究や出版の提案、教員募集の話などが飛び交うが、日本の研究者が少ないことを歯がゆく思う。日本の学界が取り残される不安や、また世界の環境問題の震源地でもあるアジアの研究者の影が薄いまま学問的リアリティが形成されていくことへの不満も感じる。
2004年に韓国でアジア地域のRC24会議が開催される際、私は思い切って身近にいた優秀な院生に報告を進めてみた。環境社会学会の研究例会として、報告準備会も開催した。基地問題をテーマとしていた彼女は、韓国とドイツでの事例を知り、その後それらを含めた比較調査へと研究を大きく発展させていった。その会議には、所属大学院からの国際会議出席助成金を得て報告した院生もいたが、こうした助成金は今後早急に制度化されるべきであろう。
2007年6月には、北京でRC24環境社会学国際会議が開催される。上記の経験から、私は特に若手の研究者に参加を勧めている。アジアでの国際会議には、非英語圏からの報告者も多く、われわれの英語でも比較的気後れすることがなく、旅費も安いので、若手研究者には都合がよい。より重要なことは、日本、韓国、中国等で国際会議を開催する中で、ともすれば欧米の問題状況を前提とした研究テーマや学問的なリアリティが中心となりがちな国際アカデミック・コミュニティの中に、今後重要性を増すであろう(東)アジア的問題状況についての認識を深めていくことが、学問的にも実践的にも、有益であろうと思われるからである。
(明治大学、環境社会学会会長 寺田 良一)
日本社会学会ニュース No.189 掲載(2006年 月)